働く男性のうつ病 – 症状の背景と原因
うつ病は、脳の中で情報を伝達するための神経伝達物質と呼ばれるセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどが減少することで心のバランスが崩れることが原因であると考えられています。
強いゆううつな気分とともに、考えがまとまらない、意欲が出ない、疲れやすい、眠れない、などの症状が長く続き、日常生活に支障をきたす病気です。
男性の場合は仕事上の責任が大きかったり、泣き言が許されない、愚痴をこぼしにくい、といった状況であったりと、ストレスを溜めやすく、またストレスの解消手段が少ない方が多くおられます。
このような場合、周囲に相談ができず辛さを本人の中で溜め込んでしまい、周りの方にも気付かれないことから、状態が悪くなってからしか病気が発見できない、ということにつながる可能性もあります。
うつ病によって引き起こされる様々な生活上の問題
うつ病の患者さんにとって、うつ病の症状は日常生活に様々な困りごとを引き起こしてしまいます。
例えば「抑うつ気分」、「集中力、決断力の低下」「疲労感、倦怠感」などにより何事にも手がつかなくなったり、仕事上のミスが重なったりすることがあります。また、「寝ようとしても眠れない(不眠)」「朝早くに目が覚める」などの睡眠に対する症状があらわれ、睡眠不足によって日中にぼーっとして仕事に身が入らなかったり、疲れがたまってイライラがつのり、人間関係に支障をきたしてしまったりすることがあります。
仕事をされている方がうつ病になった際に実際に引き起こされた問題として、
- 職場でイライラして部下に八つ当たりをしてしまう。
- ミスがあったが見落としをして、何百万円と損失を出してしまう。
- 出勤できなくなり同僚に負担をかけてしまい、仕事を辞めざるをえなくなった。
- 失職することで社会的信用を失い、家庭も崩壊してしまう。
- 家に帰って妻や子どもに八つ当たりをし、夫婦関係、家族関係が壊れてしまう。
- 気持ちが落ち込んでアルコールに頼ってしまった結果、アルコール依存となってしまう。
中でも結婚され家庭を持たれており、奥様が産休・育休中などで働けない環境では、男性が一家の収入の柱になっているケースがあるかと思います。
このような方が仕事をできなくなってしまう、失職してしまう、となると、家庭が崩壊してしまうリスクは非常に高いと言えます。
このようにうつ病は、放置していると日常生活に対して取り返しのつかない状況を引き起こしてしまう可能性があります。
うつ病が疑われる場合には早期に専門の医療機関へ受診し、適切な治療を受けることが大切です。
うつ病の治療方法
うつ病と診断されると、治療のためには「十分な休養」と「お薬による治療」が重要となります。また、カウンセリングなどの「精神療法」を組み合わせることで治療効果の向上、再発の予防が期待できます。
お薬による治療は、主に症状を抑えることが目的となります。最初は副作用を抑えるために少量から抗うつ薬を飲み始め、徐々に適切な量に調整していきます。抗うつ薬の効果があらわれるまでには飲み始めてから2~3週間ほどかかるため、焦らずに継続して服用していただくことが大切です。
精神療法では、カウンセリングを通して自分の性格や物事の考え方、見方などを見直し、修正していくことで「うつ状態」になりにくい思考や行動、こころの持ちようを身に着けることを目的としています。
うつ病の治療では、気を付けるべきことが二点あります。
一つ目は、症状には波があるため、その日その日の気持ちの好調・不調状態に一喜一憂せず、治療を継続することです。
二つ目は、うつ病は再発が非常に多いということです。一時的に良くなったから、と治療を途中で止めてしまうと再発、悪化してしまうリスクが高まるので、医師が大丈夫と判断するまで、焦らずにしっかりと治療していきましょう。
また「うつ病の症状が良くなった=仕事に復帰できる」という状態ではありませんので、注意してください。
仕事に復帰するためには、「うつ病の症状が改善されており生活に支障が出なくなっていること」に加えて、「仕事ができる生活リズムが構築できていること」が重要です。
従って仕事に復帰されたい場合、リハビリテーションを行って”復職の準備”をする必要があります。
当院では復職を希望される方へのサポートとして、”復職の準備”のためのリハビリテーションを行っておりますので、復職の希望がある方はご遠慮なくお申し出ください。